採用担当は、企業の成長と発展を支える重要な役割を担っています。
優秀な人材を見つけ出し、組織に適した人材を確保することは、事業の成功に大きな影響を与えます。しかし、初めて採用担当になると、何から始めればよいのか、どのようなスキルが必要なのか、戸惑うことも多いでしょう。
本記事では、採用担当になったら知っておきたい基本知識から、実際の採用業務まで、採用活動に必要な情報を網羅的に解説します。
これから採用担当になる方や、採用活動の改善を目指す方に、ぜひ参考にしていただければと思います。
採用担当になったら知っておきたい基本知識
まず採用担当になったら知っておきたい基本知識を紹介します。
採用担当に向いている人向いていない人
採用担当に向いている人と向いていない人には、それぞれ特徴があります。
採用担当に向いている人
採用担当に向いている人は、以下のような特徴を持っています。
- コミュニケーション能力が高い
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採用活動では、様々な人とコミュニケーションを取る必要があります。応募者との面接や、社内の関係者との調整など、コミュニケーション能力の高さが求められます。
- 人と接することが好き
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採用活動は、人と直接関わる機会が多い仕事です。人と接することが好きで、他者との関わりにやりがいを感じる人は、採用担当に向いているでしょう。
- 組織の目標に共感できる
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採用担当は、企業の目標や価値観を理解し、共感することが重要です。組織の一員として、企業の成長に貢献したいという思いを持っている人は、採用担当に適しています。
- 粘り強く物事に取り組める
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採用活動は、すぐに結果が出るものではありません。優秀な人材を見つけ出すために、粘り強く取り組む姿勢が必要です。
- 柔軟性があり、状況に応じて対応できる
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採用活動では、様々な状況に直面します。柔軟に対応できる適応力と、臨機応変に行動できる力が求められます。
採用担当に向いていない人
一方で、個人プレーを好む人や変化を好まない人には採用担当は向いていないと言えるでしょう。採用活動では、社内外の関係者との連携が不可欠であり、状況に応じで柔軟に対応する必要があるためです。
また、仕事の特性上、人の評価をすることやストレス耐性が低い人には採用担当は不向きかもしれません。
採用担当と人事担当の違い
採用担当と人事担当は、どちらも人材に関わる仕事ですが、その役割は異なります。採用担当と人事担当の主な違いは以下の通りです。
担当 | 役割 |
---|---|
採用担当 | 企業外の人材を対象とした採用活動全般 |
人事担当 | 企業内の人材を対象とした人材教育やキャリア開発など |
ただし、中小企業では採用担当と人事担当を兼任するケースもあり、明確に区別されていないこともあります。企業の規模や方針によって、採用担当の業務範囲は異なるため、自社の状況を踏まえて理解しておく必要があります。
採用担当と人事担当の連携は、採用活動の成功に欠かせません。採用担当が優秀な人材を見つけ出し、人事担当がその人材を育成・定着させることで、企業の成長に貢献できるのです。両者の役割を理解し、密接なコミュニケーションを取ることが重要です。
採用担当の仕事内容とは?
採用担当の主な仕事は、企業の求める人材を見つけ出し、採用することです。具体的な業務としては、以下のようなものがあります。
- 採用計画の立案
- 人材要件の設定
- 採用手法の選定
- 母集団形成
- 採用選考
- 内定者フォロー
これらを具体的に解説します。
採用計画の立案
採用計画の立案は、採用活動の第一歩となる重要なプロセスです。採用計画を立てる際には、採用の目的を明確にし、ターゲット、スケジュールの策定と進めていきます
採用の目的を明確にする
採用計画を立てる際は、まず採用の目的を明確にします。
具体的には、会社の現状となりたい未来を照らし合わせ、そのギャップを埋めるためにはどうすれば良いかを考えていきます。採用担当だけでは、採用の目的を決めることはできないため、経営層や現場の社員の声を聞きながら今後の方針を決めていきます。
例えば、「来年の売り上げを1.5倍にする」、「新事業を来年度には軌道に乗せる」など、達成したい目標に対して、必要な人員がどの程度なのかを考えることで採用の目的を定めていきます。
また、採用目的は採用担当者間で決めるだけでなく、全社に共有して皆が同じ目的を意識できることを心がけましょう。
採用ターゲットの設定
採用の目的が明確になったら、採用ターゲットを設定します。採用ターゲットを設定する際は、具体的に以下の点を考慮しましょう。
- 採用の目的に基づき、必要な職種・ポジションを特定する
- 必要な人数を適切に見積もる
- 求めるスキルや経験のレベルを明確にする
- 雇用形態をどうするか決める
このように、適切な採用ターゲットを設定することで、効率的な採用活動を行うことができます。また、採用ターゲットに合わせた採用手法を選択することで、優秀な人材の確保につながるでしょう。
採用スケジュールの策定
採用スケジュールを策定することで、採用活動をスムーズに進められます。採用活動のスタート時期と終了時期、各選考ステップの日程、内定出しのタイミングを決めましょう。
採用は優秀な人材の取り合いとなるため、採用スケジュールはスピード感も重要です。無理のない範囲でシミュレーションを行ったのち、決めていくのが重要です。
適切な採用スケジュールを策定することで、採用活動の進捗管理がしやすくなり、効率的な採用活動を行うことができます。また、応募者との円滑なコミュニケーションにもつながり、採用活動の成功率を高めることができるでしょう。
人材要件の設定
採用計画が立てられたら、次は人材要件の設定を行います。人材要件とは、採用したい人物像を明確にした基準です。そのため、採用計画と並んで重要な工程になります。
人材要件では、採用ポジションに必要なスキルや経験だけでなく、求める人物像や価値観、将来のキャリアパスも含めて定義します。社内の関係者とよく議論し、明確かつ具体的な人材要件を設定しましょう。
採用手法の選定
採用手法には、求人広告(自社サイト、求人サイト)、リファラル採用、ソーシャルリクルーティング、ダイレクトリクルーティング、ヘッドハンティングなどがあります。
それぞれの採用手法には特徴があり、求人広告は比較的コストが低く多くの応募者を集められる一方、応募者の質にばらつきがあります。
母集団形成
優秀な人材を確保するためには、母集団形成も非常に重要です。
まず、効果的な求人広告を作ることが母集団形成の成否を大きく分けます。そのため、募集要項はターゲットとなる求職者に魅力的に映る内容にする必要があります。求人タイトルや本文は、具体的かつインパクトのある内容にし、職務内容や応募資格は明確かつ詳細に記述しましょう。
また、応募者とのコミュニケーションも、母集団形成では重要になってきます。応募者の問い合わせには、迅速かつ丁寧に対応しましょう。面接日程の調整は、応募者の都合を優先し、柔軟に対応することが大切です。また、選考結果の連絡は速やかに行い、応募者を待たせないようにしましょう。
採用選考
母集団形成を行った後は実際の採用選考に移ります。書類選考や面接は、採用活動の中核をなす重要なプロセスなため、それぞれ解説します。
書類選考
書類選考では、応募者の経歴や志望動機、自己PRなどを確認し、採用ポジションに適した人材かどうかを判断します。
履歴書や職務経歴書だけでなく、ポートフォリオや課題の提出を求めることで、より多面的な評価が可能になります。また、応募者の価値観や人柄を読み取ることも重要です。
面接
まずは、面接を担当する面接官を選定する必要があります。面接官の選定は、採用ポジションに関連する部署の責任者や、人事部門の担当者が適任でしょう。複数回の面接を行う場合は、面接官による評価差をできる限りなくす必要があります。
そのためには、人材要件の再確認と、評価基準の統一が不可欠です。また、面接官のトレーニングを行うことで、面接スキルの向上を図ることができます。
また、面接では、応募者の経験やスキル、人柄を多角的に評価できるような質問を準備しましょう。応募者の強みや弱み、ストレス耐性、コミュニケーション能力などを見極められる質問が効果的です。
内定者フォローと入社後のサポート
内定者フォローと入社後のサポートは、優秀な人材の獲得と定着につながる重要な取り組みであるほか、内定自体の対策にも有効です。
内定辞退を防ぐためには、内定者とのコミュニケーションを密に取ることが大切です。内定者の不安や疑問に耳を傾け、適切なアドバイスを提供しましょう。また、内定者同士の交流会や、社員との面談の機会を設けることで、企業への理解を深め、入社意欲を高めることができます。
また、入社前の不安解消とモチベーション維持のために、内定者向けのイベントや研修を実施するのも効果的です。会社の理念や価値観、業務内容について理解を深める機会を提供することで、内定者の不安を和らげ、入社への期待感を高めることができます。
入社後の定着率を上げるためには、新入社員研修の充実やメンター制度の導入が有効です。新入社員が早期に職場に適応し、活躍できるようサポートすることで、離職リスクを軽減できます。また、定期的な面談を行い、新入社員の悩みや不安に寄り添うことも大切です。さらに、キャリアパスの明示や、成長の機会の提供により、長期的な定着を促すことができるでしょう。
採用担当になったら持つべき心構え
採用担当として、どのような心構えを持つべきかについて解説します。企業の顔として求職者と向き合うこと、公平で誠実な対応を心がけること、自社の魅力を十分に理解し伝えること、採用活動の目的を常に意識することが大切です。
企業の顔として求職者と向き合う
採用担当は、求職者にとって企業の第一印象を決める重要な存在です。企業の顔として、求職者と誠実に向き合い、好印象を与えるよう心がけましょう。応募者への返信は迅速に行い、面接では丁寧な対応を心がけます。また、企業の理念や価値観を体現し、求職者に伝えることも大切です。
採用活動を通じて、求職者との信頼関係を築くことが求められます。求職者の立場に立って考え、共感することで、より良いコミュニケーションを取ることができるでしょう。企業の魅力を伝えるだけでなく、求職者の思いに耳を傾け、適切なアドバイスを提供することも採用担当の重要な役割です。
公平で誠実な対応を心がける
採用活動では、公平性と誠実さが求められます。応募者の人権を重し、差別的な発言や行動は厳に慎みましょう。面接では、応募者の適性や経験を公正に評価し、恣意的な判断は避けます。不採用となった応募者にも、丁寧にフィードバックを行うことが重要です。
公平で誠実な対応は、企業の信頼性を高め、優秀な人材の確保につながります。応募者一人ひとりと真摯に向き合い、適切な対応を心がけることで、採用活動の質を高めることができるでしょう。また、不採用となった応募者との関係性を大切にすることで、将来の採用活動にも好影響を与える可能性があります。
自社の魅力を十分に理解し伝える
採用担当は、自社の魅力を十分に理解し、求職者に効果的に伝える必要があります。企業の強みや特徴、社風などを把握し、具体的なエピソードを交えて説明できるようにしておきましょう。また、求職者の関心事項を的確に捉え、適切な情報提供を行うことも大切です。
自社の魅力を伝えるためには、社内の様々な部署と連携し、情報を収集することが重要です。社員との対話を通じて、企業文化や働く環境の実態を理解し、求職者に伝えられるようにしましょう。また、自社の製品やサービス、事業戦略についても深く理解し、求職者の質問に的確に答えられるよう準備しておくことが求められます。
採用活動の目的を常に意識する
採用活動は、単に人材を確保することが目的ではありません。企業の成長や事業の発展に寄与する人材を見つけ出し、組織の一員として迎え入れることが目的です。採用担当は、常に採用活動の目的を意識し、長期的な視点で人材を評価する必要があります。
優秀な人材を確保するだけでなく、定着率の向上や早期戦力化も視野に入れて採用活動に取り組みましょう。採用した人材が組織に適応し、能力を発揮できるよう、入社後のフォローアップにも力を入れることが大切です。また、採用活動を通じて得られた知見を活かし、採用プロセスの改善や人材育成施策の立案にも貢献することが期待されます。
採用担当として、常に目的意識を持ち、戦略的に採用活動を進めることが求められます。短期的な人材確保だけでなく、長期的な視点で組織の成長に寄与する採用を目指しましょう。
採用担当が陥りやすい失敗と対策
採用担当は、採用活動を進める中で様々な失敗に陥る可能性があります。要件のミスマッチによる採用ミスや、コミュニケーション不足が招く内定辞退、適切なフォローができない場合のリスクについて解説します。
要件のミスマッチによる採用ミス
要件のミスマッチによる採用ミスは、採用活動におけるもっとも深刻な失敗の一つです。人材要件の定義が不十分だったり、応募者の能力や適性を適切に評価できなかったりすることで、組織にフィットしない人材を採用してしまう可能性があります。
このような採用ミスを防ぐためには、人材要件の定義を適切に行うことが重要です。採用ポジションに必要なスキルや経験、求める人物像を明確にし、関係者間で共有しましょう。また、選考過程では、要件とのマッチングを丁寧に行い、ミスマッチの兆候があれば、速やかに対応することが大切です。
さらに、入社後のフォローアップを通じて、採用ミスの早期発見と改善に努めることも重要です。定期的な面談を行い、新入社員の適応状況を確認し、必要に応じてサポートを提供しましょう。
コミュニケーション不足が招く内定辞退
コミュニケーション不足は、内定辞退の大きな要因となります。内定者とのコミュニケーションが不十分だと、内定者の不安や疑問に適切に対応できず、入社意欲を低下させてしまう可能性があります。
内定辞退を防ぐためには、内定者との積極的なコミュニケーションが不可欠です。内定者の不安や疑問に耳を傾け、丁寧に回答することで、信頼関係を構築しましょう。また、内定者の入社意欲を高めるために、社員との交流会や説明会を開催するなど、様々な施策を実施することが効果的です。
内定者とのコミュニケーションは、入社まで継続的に行うことが重要です。定期的な連絡を取り、内定者の状況を把握し、必要なサポートを提供しましょう。
適切なフォローができない場合のリスク
適切なフォローができない場合、内定辞退や早期離職のリスクが高まります。内定者や新入社員に対する支援が不十分だと、組織への適応に苦戦し、早期離職につながる可能性があります。
適切なフォローを行うためには、内定者や新入社員一人ひとりの状況を把握し、きめ細やかなサポートを提供する必要があります。定期的な面談を行い、悩みや不安に寄り添うことで、定着率の向上につなげましょう。
また、社内の関係部署と連携し、受け入れ体制を整えることも重要です。配属部署との調整を密に行い、新入社員がスムーズに業務に取り組めるような環境を整備しましょう。
適切なフォローを行うことで、内定者や新入社員の満足度を高め、早期離職を防ぐことができます。採用活動の成果を最大化するためにも、入社後のフォローアップに力を入れることが求められます。
採用担当としてのスキルアップ方法
採用担当として成長し、より効果的な採用活動を行うためには、継続的なスキルアップが欠かせません。
採用トレンドの把握と情報収集
採用トレンドを把握し、最新の情報を収集することは、採用担当として重要なスキルの一つです。採用市場の動向や、他社の採用事例を研究することで、自社の採用活動の改善につなげることができます。
採用トレンドの把握と情報収集のためには、以下のような取り組みが効果的です。
- 採用関連のセミナーやカンファレンスに参加する
- 採用関連の書籍やウェブサイトを定期的にチェックする
- 他社の採用活動を研究し、良い事例を参考にする
- 採用担当者のネットワークを構築し、情報交換を行う
これらの取り組みを通じて、採用トレンドを把握し、自社の採用活動に活かすことができます。また、情報収集を継続的に行うことで、採用担当としてのスキルアップにもつながるでしょう。
面接スキルを磨くためのトレーニング
面接は、採用活動の中核をなす重要なプロセスです。面接スキルを磨くことで、応募者の能力や適性をより的確に評価し、優秀な人材の確保につなげることができます。
面接スキルは、採用担当者にとって必須のスキルの一つであるため、継続的なトレーニングを通じて、面接スキルを磨き、採用活動の質を高めていくことが求められます。
面接官トレーニングに関してはこちらの記事で詳しく解説しています。

人事関連資格の取得メリット
人事関連資格の取得は、採用担当としてのスキルアップに役立ちます。人事関連の知識や スキルを体系的に学ぶことができ、採用活動の質を高めることができます。
代表的な人事関連資格としては、以下のようなものがあります。
- 一般社団法人人事総務スキルアップ検定協会「人事総務検定」
- 特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会「キャリアコンサルタント」
- 一般社団法人日本産業カウンセラー協会「産業カウンセラー」
これらの資格を取得することで、人材マネジメントやキャリア支援、採用活動に関する知識やスキルを習得することができます。また、資格取得によって、専門性の高さをアピールすることができ、キャリアアップにもつながるでしょう。
人事関連資格の取得は、採用担当としてのスキルアップに大きく貢献します。自身のキャリア形成の一環として、資格取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
採用担当としてのスキルアップは、採用活動の質を高め、企業の成長に寄与します。採用トレンドの把握と情報収集、面接スキルの向上、人事関連資格の取得など、様々な取り組みを通じて、継続的なスキルアップを図ることが重要です。
まとめ
本記事では、採用担当になったら知っておきたい基本知識から、採用計画の立案、人材要件の定義、面接の進め方まで、採用活動に必要な情報を網羅的に解説しました。
採用担当は、企業の成長と発展を支える重要な役割を担っています。採用活動を成功に導くためには、適切な採用計画の立案、明確な人材要件の定義、効果的な母集団形成と応募者管理、適切な面接の実施、内定者フォローと入社後のサポートが不可欠です。
本記事で紹介した知識やノウハウを活かし、自社に適した採用活動を展開していただければと思います。優秀な人材の獲得と定着に向けて、採用担当としてのさらなる成長を期待しています。