ポテンシャル採用とは?メリット・デメリットや成功のコツを徹底解説

ポテンシャル採用とは?メリット・デメリットや成功のコツを徹底解説

ポテンシャル採用とは、応募者の経験やスキルよりも、将来的な可能性や潜在的な能力を重視して行う採用手法です。

近年、人材不足が深刻化する中で、即戦力人材の確保が困難になっていることから、多くの企業がポテンシャル採用に注目しています。

本記事では、ポテンシャル採用の基礎知識から、メリット・デメリット、成功のためのポイントまでを詳しく解説します。

目次

ポテンシャル採用の基礎知識

ポテンシャル採用の基本的な概念や、注目されている背景について説明します。

ポテンシャル採用とは?

ポテンシャル採用とは、応募者の現時点でのスキルや経験よりも、将来的な成長可能性や適応力を重視した採用方法です。企業は、応募者の人物像や学習意欲、コミュニケーション能力などを総合的に判断し、長期的な視点で人材を選考します。

ポテンシャル採用では、必ずしも即戦力となる人材を求めるわけではありません。むしろ、入社後の教育や育成を通じて、企業の求める人材像に近づけていくことを目的としています。そのため、応募者の適性や可能性を見極めるためのアセスメントや面接が重要となります。

ポテンシャル採用が注目される背景

ポテンシャル採用が注目される背景には、いくつかの理由があります。

採用市場の激化による人材不足

労働力人口の推移
令和6年版厚生労働白書を参考に筆者作成

近年、少子高齢化や人口減少により、労働力人口が減少傾向にあります。一見増加しているように見えますが、定年退職年齢の引き上げなどによるもので若い世代の労働力は大きく減少しています。

そのため、企業間の人材獲得競争が激化し、特に即戦力となる経験者の採用が困難になっています。こうした状況下で、ポテンシャルのある若手人材を採用し、自社で育成することが重要になっています。

また、技術の進歩やビジネス環境の変化に伴い、必要とされるスキルも急速に変化しています。そのため、現時点での能力だけでなく、変化に適応し、新しいスキルを習得できる人材が求められるようになりました。ポテンシャル採用は、そうした柔軟性や適応力の高い人材を確保するための有効な手段と言えます。

潜在能力の高い人材を採用するため

ポテンシャル採用では、応募者の潜在的な能力や可能性を重視します。単に知識やスキルがあるだけでなく、自ら考え、行動できる人材を求めているのです。こうした人材は、将来的に企業の成長を担う存在になると期待されています。

また、ポテンシャル採用では、応募者の価値観やパーソナリティも重視されます。企業の理念や文化に共感し、長期的に活躍できる人材を見極めることが重要だからです。単に即戦力になるかどうかだけでなく、組織に適応し、周囲と協調しながら成長できる人材を採用することが目的となります。

ポテンシャル採用と新卒採用・中途採用の違い

ポテンシャル採用は、新卒採用や中途採用とは異なる特徴があります。

新卒採用との違い

新卒採用は、学生を対象に一定の時期に一括で採用活動を行うのが一般的です。企業は、学生の学業成績や活動履歴などから、将来的な可能性を判断します。

一方、ポテンシャル採用は、必ずしも新卒者に限定されず、社会人経験のある第二新卒なども対象となります。また、通年採用を行うケースも多く、柔軟性が高いのが特徴です。

中途採用との違い

中途採用は、即戦力となる経験者を対象とした採用方法です。応募者のスキルや経験、実績を重視し、欠員補充や事業拡大に伴う人材確保を目的とすることが多いです。

その反面、ポテンシャル採用では、必ずしも即戦力を求めるわけではありません。応募者の適性や将来性を見極め、育成を前提とした採用を行います。

ポテンシャル採用のメリットとデメリット

ポテンシャル採用のメリットとデメリットをそれぞれ解説します。

ポテンシャル採用のメリット

ポテンシャル採用には、以下のようなメリットがあります。

豊富な人材プールからの採用

ポテンシャル採用では、経験やスキルを問わないため、幅広い人材層から採用できます。新卒者だけでなく、第二新卒や社会人経験のある若手なども対象となるため、人材プールが豊富です。

また、専門性や経験にとらわれずに、人物重視の採用ができるため、多様な人材を確保しやすいというメリットがあります。

自社の企業文化への適応力が高い

ポテンシャル採用で入社した社員は、自社の企業文化に染まりやすいというメリットがあります。

経験者と比べて、他社での業務経験が少ないため、自社の方針や価値観を受け入れやすいのです。また、入社後の教育を通じて、自社の求める人材像に近づけていくことができます。

長期的な人材育成が可能

ポテンシャル採用では、長期的な視点で人材を育成できます。即戦力を求めるのではなく、じっくりと時間をかけて社員を成長させていくことができるのです。

入社後の教育や OJT を通じて、企業の求める人材像に近づけていくことが可能です。また、長期的な育成を前提とすることで、社員のエンゲージメントや定着率の向上にもつながります。

育成コストの削減

ポテンシャル採用は、育成コストを削減できるというメリットもあります。即戦力となる経験者を採用する場合、高い給与や採用コストがかかります。

一方、ポテンシャル採用では、初任給を抑えられるため、人件費を抑制できます。また、自社での教育を前提とするため、外部の研修などにかかるコストも削減できます。

ポテンシャル採用のデメリット

一方で、ポテンシャル採用には、以下のようなデメリットもあります。

即戦力としての活用が難しい

ポテンシャル採用で入社した社員は、即戦力として活用することが難しいというデメリットがあります。

いくら潜在能力が高いとは言っても、中途採用などの経験者に比べ経験やスキルが不足しているため、すぐに業務に携わることができないのです。また、教育や育成に時間がかかるため、戦力化までに一定の期間が必要となります。

早期離職のリスクがある

ポテンシャル採用では、早期離職のリスクがあります。応募者の適性や将来性を見極めることが難しいため、ミスマッチが起こりやすいのです。

また、潜在能力が高い故に、入社後の期待とのギャップから、モチベーションが下がってしまうケースもあります。早期離職は、採用コストや教育コストの無駄につながるため、注意が必要です。

ポテンシャル採用を成功させるためのポイント

ポテンシャル採用を成功させるためのポイントを説明します。

自社に合った人物像の明確化

ポテンシャル採用を成功させるためには、自社に合った人物像を明確にすることが重要です。企業理念や価値観、求める人材像を明文化し、採用基準を設定しましょう。応募者の適性や将来性を判断する際の指標となります。

また、自社の人材ニーズを的確に把握することも大切です。単に即戦力が欲しいのか、将来的な幹部候補を求めているのかによって、採用方針は変わってきます。人事部門と現場の連携を密にし、必要な人材像を共有しておくことが求められます。

ポテンシャルを見極める採用プロセスの設計

ポテンシャル採用では、応募者の適性や将来性を見極めるための採用プロセスの設計が重要です。単に面接だけでは、応募者の潜在的な能力を判断することは難しいでしょう。

アセスメントテストや適性検査、グループディスカッションなど、多面的な評価方法を取り入れることが有効です。また、複数の面接官が関わることで、応募者の人物像を多角的に把握できます。

さらに、インターンシップや職場見学など、応募者と企業が接点を持つ機会を設けることも大切です。

ポテンシャル人材の育成と定着に向けた取り組み

ポテンシャル採用では、入社後の育成と定着に向けた取り組みが欠かせません。

入社後の教育・研修プログラム

ポテンシャル人材を戦力化するためには、入社後の教育・研修プログラムが重要です。社会人としての基礎知識やビジネスマナー、業務に必要なスキルなどを身につける機会を提供しましょう。また、OJT や先輩社員によるサポートも欠かせません。

教育・研修プログラムは、長期的な視点で設計することが大切です。単発的な研修だけでなく、段階的にステップアップできる仕組みを用意しましょう。また、個々の社員の成長度合いに合わせて、柔軟にプログラムを調整することも求められます。

キャリアパス・成長機会の提示

ポテンシャル人材の定着を図るためには、キャリアパスや成長機会を明示することが重要です。入社後のキャリア形成や役割の変化、将来のビジョンを伝えることで、社員のモチベーションを高めることができます。

また、社内公募制度や海外赴任の機会など、挑戦できる場を用意することも有効です。社員の希望や適性に合わせて、キャリアを柔軟に設計できる仕組みを整備しましょう。

メンター制度の導入

ポテンシャル人材の成長を支援するために、メンター制度の導入が有効です。メンター制度とは、先輩社員が後輩社員の相談相手となり、アドバイスを提供する仕組みです。

技術的な指導だけでなく、悩みや不安の相談にものってもらえるため、社員の心理的な安定にもつながります。また、メンターとの信頼関係が深まることで、定着率の向上にもつながるでしょう。

適材適所の配置と業務アサイン

ポテンシャル人材の能力を最大限に発揮してもらうためには、適材適所の配置と業務アサインが重要です。個々の社員の適性や強みを見極め、それに合った部署や役割に配置することが求められます。

また、徐々にステップアップできるような業務アサインを心がけましょう。難易度の高い仕事を急に与えるのではなく、少しずつレベルアップしていくことで、社員の成長を促すことができます。

上司や先輩社員との丁寧なコミュニケーションを通じて、個々の社員の状況を把握しながら、業務を割り当てていくことが大切です。

ポテンシャル採用を実施している企業事例

ポテンシャル採用に取り組み、成果を上げている企業の事例を紹介します。

株式会社 電通

出典:電通ウェブサイト

株式会社電通では、積極的にポテンシャル採用を行っています。実際に2026年卒の採用枠では、入社時点で30歳未満であれば学歴・新卒/既卒に関わらず応募することが可能となっています。

日本最大手の広告代理店である電通ですが、ポテンシャル採用を取り入れることで、多種多様な人材を採用しています。これによって、世の中の企業や人の課題をユニークなアイデアで解決するというビジネスモデルを可能にしているといえるでしょう。

リクルートホールディングス

出典:リクルートホールディングス

リクルートホールディングスでは、採用年と4月に入社できることと、30歳以下であることの2つの条件のみでポテンシャル採用を行なっています。また、既卒業者や就業経験者の応募も可としていて、非常に広い窓口を設けています。

リクルートホールディングスの「一人ひとりが個性や強みを発揮して自律的に働くために、社員が成長できる機会・環境を提供する会社でありたい」という思いを体現するかのような採用手法と言えます。

まとめ

ポテンシャル採用は、即戦力人材の採用が難しい中で、将来を担う人材を確保するための有効な手段です。経験やスキルよりも、適性や意欲を重視し、長期的な視点で人材を育成することが求められます。

ポテンシャル採用を成功させるためには、自社に合った人物像の明確化、適切な採用プロセスの設計、充実した育成プログラムの整備が欠かせません。また、キャリアパスの提示や成長機会の提供など、人材の定着に向けた取り組みも重要です。

ポテンシャル採用には課題もありますが、工夫次第で十分に乗り越えられるでしょう。人材育成に積極的に投資し、ポテンシャル人材が活躍できる環境を整備することが、企業の持続的な成長につながります。

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