アルムナイ採用とは?意味やメリット・デメリット、活用ポイントを解説

アルムナイ採用とは?意味やメリット・デメリット、活用ポイントを解説

近年、企業の人材獲得競争が激化する中で注目を集めている採用手法に「アルムナイ採用」があります。

アルムナイ採用とは、過去に自社で働いていた元社員(アルムナイ)を再雇用することを指します。即戦力の獲得や、採用コストの削減など、企業にとってのメリットは大きいですが、実際に導入する際には十分な準備と対策が必要です。

本記事では、アルムナイ採用の概要からメリット・デメリット、成功のポイントまでを詳しく解説します。

目次

アルムナイ採用とは?

アルムナイ採用とは、企業が自社の元社員を再雇用する採用手法のことです。近年、転職市場の活性化や優秀な即戦力人材の確保が難しくなる中で、新たな採用チャネルとして注目されています。

「アルムナイ」の意味

「アルムナイ」という言葉は、ラテン語で「卒業生」や「同窓生」を意味する “alumnus” に由来しています。一般的には大学の卒業生を指すことが多いですが、企業の人事用語として使われる場合は、自社を離職した元従業員のことを指します。

アルムナイは、在職中に自社の業務や文化を深く理解し、その後外の組織で新たな経験を積んだ人材です。自社への理解と、他社での経験を併せ持つ、貴重な存在だと言えるでしょう。

アルムナイ採用の特徴

アルムナイ採用の最大の特徴は、企業と求職者双方にメリットがあることです。企業側は、自社の業務に精通した即戦力を獲得でき、採用や教育にかかるコストを抑えられます。

一方、アルムナイにとっては、以前働いていた職場の環境や人間関係をよく知った上で仕事をスタートできるため、新しい環境に溶け込む負荷が少なくて済みます。双方にとってハードルの低い採用手法だと言えます。

アルムナイ採用が注目されている背景

アルムナイ採用が脚光を浴びるようになったのは、ここ数年の出来事ですが、いったいなぜ注目されるようになったのでしょうか。

転職市場の活性化と中途採用の重要性

マイナビキャリアリサーチラボ「転職動向調査2024年版」を基に作成

日本の雇用環境は大きな変革期を迎えており、労働者の流動性が高まっています。

終身雇用や年功序列といった従来の慣行は崩れつつあり、転職は珍しいことではなくなりました。実際、マイナビキャリアリサーチのデータでは「転職動向調査2024年版」では転職率が近年高水準で推移していることがわかります。

こうした状況下で、企業は優秀な即戦力人材を獲得するために、中途採用を強化せざるを得なくなっています。特に、ベテラン層の専門人材は引く手あまたで、採用競争が年々激しくなっています。

企業側の人材獲得競争の激化

グローバル化や技術革新が急速に進む中、企業間の競争はますます熾烈になっています。新しい事業領域への進出や、イノベーションの創出など、スピード感を持って変化に対応できる人材が求められています。

しかし、優秀な人材の多くは売り手市場であり、企業は採用に苦戦しているのが実情です。そこで、自社への理解とロイヤルティを兼ね備えたアルムナイの存在価値が見直されるようになったのです。

アルムナイ採用のメリット

ここでは、近年注目されているアルムナイ採用の4つのメリットを解説します。

即戦力人材の獲得

アルムナイは、自社の業務内容や社風、求められるスキルを熟知しているため、即戦力としての活躍が大いに期待できます。新卒社員や他社からの中途採用者と比べ、業務に対する適応力は格段に高いと言えるでしょう。

加えて、アルムナイは自社を離れた後も、同業他社や関連業界で経験を積んでいるケースが多いため、自社にはない新しい知見や視点を持っている可能性があります。事業の発展や新規プロジェクトの立ち上げなどに貢献してくれるかもしれません。

採用・教育コストの削減

即戦力人材であるアルムナイを採用できれば、長期的な育成プログラムは必要ありません。これにより、採用後の教育にかかるコストを大幅に下げることができます。

また、一般的な中途採用と比較しても、自社への理解があるアルムナイは採用活動そのものがスムーズに進みます。面接の回数を減らせたり、人物評価に時間をかけずに済んだりと、採用工数の削減にもつながります。結果として、採用コスト全体を抑えられるのです。

社内文化の理解と適応力

アルムナイは、自社の文化や価値観を体現している人材だと言えます。社内のコミュニケーションスタイルや、課題解決のプロセスなど、組織に根付いた暗黙知を理解しています。

そのため、アルムナイは組織や人間関係にスムーズに溶け込むことができ、周囲との連携もしやすくなります。チームワークを重視する職場や、特殊なスキルが求められるポジションなどでは、特に大きな効果を発揮するでしょう。

社外ネットワークの活用

アルムナイは、自社を離れてからも業界内の人脈を広げています。転職先での上司や同僚、取引先など、幅広いコネクションを持っているはずです。

こうした社外ネットワークは、自社単独では築きにくい関係性であり、ビジネス機会の創出に役立つ可能性を秘めています。例えば、新規事業のパートナー探しや、営業先の紹介など、アルムナイのネットワークを生かしたアプローチができるかもしれません。

アルムナイ採用のデメリット

アルムナイ採用は万能な採用手法ではありません。導入する前に、次のようなデメリットがあることを理解しておく必要があります。

人事制度の見直しの必要性

アルムナイを受け入れるためには、人事制度の柔軟性が求められます。特に、年功序列型の賃金体系を採用している企業では、アルムナイの処遇を巡って社内の不公平感が生じる恐れがあります。

一方で、アルムナイにとっては前職での経験やスキルを適切に評価されないと、モチベーションの低下につながりかねません。年齢や勤続年数にとらわれない、成果主義の人事評価制度の会社に向いていると言えるでしょう。

職場の人間関係への影響

アルムナイ採用では、過去の人間関係が生じる弊害も考えられます。アルムナイと現在の社員との間に確執や軋轢があった場合、職場の雰囲気が悪くなる可能性があります。

また、「辞めた人間には負けたくない」というプライドから、アルムナイの採用に反発する社員がいるかもしれません。受け入れ側の社員への十分なケアと、アルムナイ本人の配慮が必要です。

アルムナイ採用を活用するポイント

デメリットを最小限に抑え、アルムナイ採用の効果を最大化するためには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。

明確な採用基準の設定

アルムナイ採用では、自社にマッチする人材を見極めることが大切です。単に「元社員だから」という理由で採用するのは避けるべきです。

自社が求める人物像や、ポジションに必要なスキルを明確にした上で、それに合致するアルムナイを選抜することが重要です。客観的な採用基準を設定し、公平な評価プロセスを経て採用を進めましょう。

アルムナイとのコミュニケーション強化

アルムナイ採用を検討する際は、日頃からアルムナイとの関係性を築いておくことが有効です。定期的な情報発信や、交流イベントの開催など、継続的なコミュニケーションを心がけましょう。

信頼関係があれば、アルムナイ側からも自社への関心を持ってもらいやすくなります。優秀な人材の獲得に向けて、アルムナイコミュニティの形成に力を入れることをおすすめします。

社内の受け入れ体制の整備

アルムナイ採用を円滑に進めるには、社内の理解と協力が不可欠です。経営層や人事部門が一丸となって、アルムナイ採用の意義を社内に浸透させる必要があります。

加えて、受け入れ部署でのサポート体制の整備も重要です。上司や同僚との良好なコミュニケーションが取れるよう、環境づくりに努めましょう。アルムナイが高いパフォーマンスを発揮できる土壌があってこそ、採用の成果が得られるのです。

アルムナイ制度を活用している企業事例

アルムナイ制度を実施している企業は、多くはありませんが意外と身近な企業も取り入れることがあります。ここでは、アルムナイ制度を実際に活用している企業を紹介します。

SCSK株式会社

出典:SCSK株式会社

大手のSIerであるSCSK株式会社では、アルムナイ採用である「リ・ジョイン制度」を取り入れています。

実際にリ・ジョイン制度を活用した社員からは、馴染みやすいとの声も上がっており、会社としてアルムナイ制度が浸透していることが伺えます。また、転職先での経験をしっかりと社内で活かせていることもアルムナイ制度をうまく活用していることが分かります。

株式会社すかいらーくホールディングス

出典:株式会社すかいらーくホールディングス

皆さんも普段よく利用することが多いと思いますが、すかいらーくでもアルムナイ採用を取り入れています。

すかいらーくでは、結婚や引っ越し、退職など仕事を辞めた理由に関わらず採用を行っています。正規雇用でなくとも、バイトの方でもアルムナイ採用を受けられるため、多くの採用窓口があることがわかります。

まとめ

アルムナイ採用は、即戦力人材の獲得や採用コストの削減など、企業にとって大きなメリットをもたらす採用手法です。一方で、人事制度の見直しや社内の受け入れ体制の整備など、事前の準備も必要不可可欠です。

自社の強みを生かしつつ、アルムナイのスキルや経験を適切に評価・活用できる環境を整えることが、アルムナイ採用の成功のカギを握ります。日頃からアルムナイとの関係性を大切にしながら、戦略的な採用活動を進めていくことが求められるでしょう。

アルムナイ採用を効果的に行うことで、企業の持続的な成長と発展につなげていきましょう。優秀な人材の力を結集し、ビジネスの新たな可能性を切り拓いていくことが期待されます。

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