キャリア採用とは?中途採用との違いやメリット・デメリットを徹底解説

キャリア採用という言葉をよく耳にするようになりましたが、具体的にどのような採用方法なのでしょうか。

近年、企業の採用戦略において重要な位置を占めるようになったキャリア採用について、その特徴やメリット・デメリットを理解することは、効果的な人材確保に欠かせません。

そこで、この記事では、キャリア採用の基本概念から中途採用との違い、適した職種、成功のポイントまで、幅広く解説していきます。

目次

キャリア採用の基本

まずは、キャリア採用の基本的な概念について理解を深めていきましょう。

キャリア採用とは

キャリア採用とは、すでに社会人経験を積んだ人材を対象とした採用方法です。その中でも、特に専門性やスキルを持つ即戦力となる人材を獲得することが目的であり、企業の課題解決や事業拡大に貢献できる人材を求める際に効果的です。

例えば、マーケターを採用する際に、プロダクトマネージャーを任せることを前提に、マネジメントを数年経験していることを条件としている場合はキャリア採用となります。

また、学生でも長期インターンや学生サラリーマンのような形で就業経験がある場合もありますが、新卒採用の場合はキャリア採用とは言いません。

キャリア採用が注目される理由

近年、キャリア採用が注目される理由はいくつかあります。

  1. 少子高齢化に伴う労働力人口の減少により、優秀な人材の獲得競争が激化していること
  2. 事業環境の変化が速く、新たな分野への進出や事業拡大を進める企業にとって、即戦力となる人材の確保が急務となっていること
  3. 働き方の多様化や価値観の変化により、転職に対する抵抗感が薄れ、キャリアアップを求める人材が増えていること

これらの理由から、企業はキャリア採用に力を入れるようになっています。実際に、令和6年版厚生労働白書のデータを見てみると2050年には現在よりも労働力人口が減っていくことが想定されています。

労働力人口の推移
令和6年版厚生労働白書を参考に筆者作成

キャリア採用では、特に経験豊富な人材を確保することで、事業の拡大や新規分野への進出をスピーディーに進められることが大きな魅力となっています。また、多様な経験を持つ人材を獲得することで、組織の活性化や新たな視点の導入にもつながります。

キャリア採用と中途採用の違いは?

キャリア採用と中途採用は、ともに社会人経験者を対象とした採用方法ですが、いくつかの違いがあります。

項目キャリア採用中途採用
対象者専門性やスキルを持つ即戦力人材経験の浅い人材も含む
重視する点応募者の職歴、実績、専門知識人柄や企業との相性も考慮
目的即戦力としての活躍を期待ポテンシャルや適性を見て採用

キャリア採用では、特定の職種や業務に必要な専門性やスキルを持つ人材を対象とし、即戦力としての活躍を期待して採用します。一方、中途採用では、必ずしも専門性やスキルを重視するわけではなく、ポテンシャルや適性を見て採用する場合も多いです。

また、キャリア採用では、応募者のこれまでのキャリアや実績を重視するのに対し、中途採用では、人柄や企業との相性なども考慮される傾向にあります。企業の採用目的や求める人材像に応じて、適切な採用方法を選択することが重要です。

キャリア採用のメリット

キャリア採用を行うことで、企業にはさまざまなメリットがあります。ここでは、その代表的なメリットを3つ紹介します。

キャリア採用のメリット

即戦力の確保

キャリア採用の最大のメリットは、即戦力となる人材を確保できることです。すでに専門性やスキルを持っている人材を採用することで、業務に早期に適応し、高いパフォーマンスを発揮してもらうことが期待できます。

特に、新規事業の立ち上げや事業拡大の際には、経験豊富な人材を迅速に確保することが成功の鍵となります。キャリア採用によって、必要なタイミングで即戦力を投入することで、スピーディーな課題解決や目標達成が可能となるのです。また、専門性の高い人材を確保することで、組織全体のスキルアップや業務の効率化にもつながります。

教育コストの削減

キャリア採用のもうひとつのメリットは、教育コストの削減です。新卒採用や経験の浅い中途採用の場合、入社後の教育に時間と費用がかかります。一方、キャリア採用で得た人材は、すでに業務に必要なスキルや知識を持っているため、教育にかける負担が軽減されます。

もちろん、企業独自の業務プロセスや社内ルールの習得は必要ですが、基礎的な部分で教育の手間を省くことができるのは大きなメリットです。また、即戦力として活躍してもらえるため、早期に業績への貢献が期待できます。

新たな視点とスキルの獲得

キャリア採用は、企業に新たな視点とスキルをもたらす効果も期待できます。他社での経験を積んだ人材は、これまでとは異なる発想や問題解決のアプローチを持っています。

多様な視点が加わることで、組織の慣習にとらわれない柔軟な思考が生まれ、イノベーションの促進につながります。また、高度な専門スキルを持つ人材を獲得することで、社内の技術力やノウハウが向上し、競争力の強化にも役立ちます。

キャリア採用のデメリット

キャリア採用にはメリットが多い一方で、いくつかのデメリットもあります。ここでは、その代表的なデメリットを3つ紹介します。

キャリア採用のデメリット

採用コストの増加

キャリア採用のデメリットのひとつは、採用コストの増加です。専門性やスキルを持つ人材は、その価値に見合った報酬を求める傾向にあります。そのため、キャリア採用では、新卒採用や経験の浅い中途採用と比べて、人件費が高くなる可能性があります。

また、優秀な人材を獲得するために、求人広告や人材紹介サービスを利用する場合、そのコストも発生します。採用コストの増加は、企業の財務的な負担となるため、採用計画の立案段階で十分に考慮する必要があります。コストと得られる効果のバランスを見極め、適切な採用手法を選択することが重要です。

社内文化とのミスマッチ

キャリア採用のもうひとつのデメリットは、社内文化とのミスマッチが起こるリスクがあることです。他社で培ったワークスタイルや価値観を持つ人材が、自社の文化や風土に馴染めない場合があります。

特に、長年にわたって独自の文化を築いてきた企業では、新しい人材との融合に時間がかかることもあります。社内文化とのミスマッチは、コミュニケーションの齟齬や業務の非効率化を招くだけでなく、新しい人材の定着率にも影響を与えかねません。採用時には、応募者との面接などを通じて、企業文化への適合性を見極めることが大切です。

既存社員のモチベーション低下

キャリア採用で新しい人材を迎え入れることは、既存社員のモチベーションに影響を与える可能性があります。特に、同じ職種や役職で、経験豊富な人材が外部から採用された場合、既存社員が自身のキャリアや立場に不安を感じることがあります。

また、新しい人材に対して過度に期待や優遇がなされると、既存社員との間で不公平感が生まれ、士気の低下につながるおそれがあります。キャリア採用を行う際は、既存社員とのコミュニケーションを十分に図り、モチベーションの維持に努めることが重要です。新しい人材の受け入れについて、事前に社内で周知し、理解を得ておくことも効果的でしょう。

キャリア採用に適している職種

キャリア採用は、すべての職種で効果的とは限りません。ここでは、キャリア採用に特に適している職種を3つ紹介します。

専門性の高い職種

キャリア採用は、専門性の高い職種に特に適しています。たとえば、IT分野のエンジニアやデザイナー、金融や法務の専門家など、特定の領域で高度な知識やスキルが求められる職種では、キャリア採用が効果的です。

これらの職種では、業務の遂行に必要な専門性を短期間で習得することが難しいため、すでにその能力を持つ人材を獲得することが重要となります。また、専門性の高い職種では、業界や職種特有のネットワークを持つ人材を採用することで、ビジネス機会の拡大にもつながります。

即戦力が求められる職種

即戦力が求められる職種も、キャリア採用に適しています。たとえば、営業職や管理職など、入社後すぐに成果を出すことが期待される職種では、経験豊富な人材の採用が有効です。

これらの職種では、業務の習得に時間をかけるよりも、すでにその職種で実績を持つ人材を投入することで、短期的な業績の向上が見込めます。また、新規事業の立ち上げや事業拡大の際にも、即戦力となる人材を確保することが成功の鍵となります。

経験やスキルが重視される職種

経験やスキルが重視される職種も、キャリア採用の対象となります。たとえば、コンサルタントやマーケターなど、業務の遂行にはこれまでの経験や専門スキルが不可欠な職種では、キャリア採用が適しています。

これらの職種では、単に知識があるだけでなく、実際の業務で培ったノウハウやスキルが重要となります。また、クリエイティブな職種や研究開発の分野でも、独自の視点やアプローチを持つ経験豊富な人材を採用することで、イノベーションの促進や新たな価値の創造につながります。

キャリア採用の進め方

キャリア採用を成功させるためには、適切な進め方が重要です。ここでは、キャリア採用の進め方を7つのステップで解説します。

採用計画の立案

キャリア採用を始める前に、まず採用計画を立案することが重要です。採用計画では、以下のような点を明確にします。

  • 採用の目的と求める人材像
  • 採用予算と採用人数
  • 採用スケジュール
  • 採用手法の選択

採用計画の立案には、人事部門だけでなく、現場の管理職やトップマネジメントとの連携も欠かせません。

企業の戦略や課題を踏まえ、必要な人材を見極めることが重要です。また、採用計画は柔軟に修正できるよう、定期的に見直しを行うことも大切です。

求める人材像の明確化

キャリア採用では、求める人材像を明確にすることが重要です。求める人材像を具体的に定義することで、採用活動の方向性が明確になり、適切な候補者にアプローチすることができます。

求める人材像は、必要なスキルや経験年数、職歴、企業文化へフィットするかどうかなどを具体的に定義します。また、求める人材像は、社内で共有し、採用基準の統一を図ることが大切です。

求める人材像を決めておくと、求人票や採用サイトにも明記することで、応募者に対しても適しているかどうかを明確に伝えることができます。

採用方法の選定

キャリア採用の方法は、企業の規模や業種、求める人材像などによって異なります。適切な採用方法を選択することで、効率的に優秀な人材を獲得することができます。

主な採用方法には、求人広告(求人サイト、新聞、専門誌など)、人材紹介サービス、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用、採用イベントの開催などがあります。それぞれの採用方法には長所と短所があるため、自社に合った方法を選択することが重要です。

それぞれの採用方法には長所と短所があるため、自社に合った方法を選択することが重要です。また、複数の採用方法を組み合わせることで、より効果的な採用活動につなげることができるでしょう。

採用プロセスの設計

キャリア採用では、採用プロセスの設計も重要なポイントです。応募者の負担を軽減し、優秀な人材を逃さないためにも、効率的な採用プロセスの設計が求められます。

採用プロセスは以下のものから構成されることが一般的となっています。

  • 書類選考
  • 面接(1次、2次、最終)
  • 適性検査
  • リファレンスチェック
  • 内定・オファー

各ステップでは、求める人材像に基づいた評価基準を設定し、候補者の専門性やスキル、経験、人柄などを多角的に評価することが大切です。また、応募者とのコミュニケーションを丁寧に行い、採用プロセスをスムーズに進めることも重要です。

応募者の絞り込み

キャリア採用では、応募者の中から最適な人材を見極めることが重要です。応募者の絞り込みを行う際には、明確化した人材像に合っているかや、意欲があるかなどを見ていきます。

応募者の絞り込むためには、書類選考と面接が特に重要です。書類選考では、応募者の経歴や実績を丹念に確認し、求める人材像との適合性を見極めます。面接では、応募者の専門性やスキル、経験だけでなく、人柄や価値観、仕事への姿勢なども評価します。

応募者の絞り込みには、人事部門だけでなく、現場の管理職やチームメンバーの意見も取り入れることで、多様な視点で候補者を見ることができ、結果的に良い人材の獲得に繋がります。

面接と評価

面接は、キャリア採用における重要なプロセスです。面接では、応募者の専門性やスキル、経験、人柄などを多角的に評価し、自社での活躍可能性を見極めます。

面接では、応募者の経験や実績について掘り下げて質問し、具体的なエピソードを引き出すことが重要です。また、応募者の仕事への姿勢や価値観、チームワークなども評価のポイントとなります。

面接結果の評価には、評価基準の設定が欠かせません。評価基準には、求める人材像に基づいた項目を設定し、面接官間で統一することが大切です。また、面接結果は複数の面接官で議論し、多面的に評価することが重要です。

内定から入社までのフォロー

内定者へのフォローは、キャリア採用の成功に欠かせません。内定から入社までの期間は、内定者の不安を解消し、モチベーションを維持することが重要です。

内定者フォローには、以下のような取り組みが効果的です。

  • 内定者懇親会の開催
  • 定期的な連絡とコミュニケーション
  • 入社前研修の実施
  • 配属先や業務内容の説明
  • 入社手続きのサポート

内定者フォローでは、内定者の不安や疑問に丁寧に対応し、入社への期待を高めることが大切です。また、内定辞退を防ぐためにも、内定者との関係構築に努めることが重要です。

入社後は、早期の定着とパフォーマンス発揮に向けた支援が求められます。新入社員研修やOJTを通じて、業務に必要な知識やスキルを習得させることが大切です。また、上司や先輩社員によるサポート体制を整え、スムーズな職場適応を促すことも重要です。

キャリア採用を成功させるためのポイント

キャリア採用を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、その代表的なポイントを4つ紹介します。

社内の受け入れ体制の整備

キャリア採用を成功させるためには、社内の受け入れ体制を整えることが重要です。新しい人材を迎え入れることで、既存社員のモチベーションが低下したり、社内の雰囲気が悪化したりするリスクがあります。

社内の受け入れ体制を整えるためには、キャリア採用の目的と意義の社内共有、既存社員への説明と理解の促進、新入社員と既存社員の交流機会の創出、組織風土の改善と柔軟性の向上などの取り組みが効果的です。

社内の受け入れ体制を整えることで、新しい人材と既存社員の融和を図り、組織の一体感を高めることができるでしょう。また、多様な人材が活躍できる組織文化の醸成にもつながります。

適切なオンボーディングの実施

キャリア採用した人材が早期に活躍するためには、適切なオンボーディングが欠かせません。オンボーディングとは、新入社員が組織に適応し、パフォーマンスを発揮するための支援プロセスです。

オンボーディングでは、新入社員の状況に合わせたきめ細かな支援が求められます。また、オンボーディングの期間は、新入社員の適応状況に応じて柔軟に設定することが大切です。

キャリア採用者のモチベーション管理

キャリア採用者のモチベーションを維持・向上させることは、継続的な活躍につながる重要な要素です。キャリア採用者は、これまでのキャリアや経験を活かして活躍することを期待されるため、その期待に応えるためにもモチベーション管理が欠かせません。

キャリア採用者のモチベーションを維持・向上させるためには、一人ひとりのニーズや志向性を理解し、個別のアプローチを行うことが重要です。また、上司によるコーチングやメンタリングも効果的な手法となります。

データに基づく採用の改善

キャリア採用の成果を高めるためには、データに基づく採用の改善が欠かせません。採用活動で得られたデータを分析し、課題を特定することで、採用プロセスの最適化や採用基準の見直しにつなげることができます。

具体的には、応募者数やその属性、流入経路であったり、辞退率、入社後の定着率などの数値をデータとして分析し、それを活用することで、採用活動の改善を継続的に行うことが重要です。また、データに基づく意思決定を行うことで、採用活動の客観性と説得力を高めることができるでしょう。

データに基づく採用の改善は、長期的な視点で取り組むことが大切です。短期的な成果だけでなく、中長期的な組織への影響も考慮しながら、採用活動の最適化を図ることが求められます。

まとめ

以上、キャリア採用の基本から進め方、成功のポイントまで、幅広く解説してきました。キャリア採用は、即戦力となる人材の獲得や組織の強化に効果的な採用手法ですが、その一方で、採用コストの増加や社内文化とのミスマッチなどのデメリットもあります。

企業の状況や目的に合わせて、適切な採用計画を立案し、求める人材像を明確にすることが重要です。また、採用プロセスの設計や応募者の絞り込み、内定者フォローなど、各ステップで工夫を凝らすことで、キャリア採用の成果を高めることができるでしょう。

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